ノースウェスタン大学滞在記(米国シカゴ、エバンストンの様子)

システム理工学部 機械工学科

准教授 齋藤 賢一

 


1.      はじめに

関西大学平成19年度学術研究員として、20074月から20083月までの1年間、アメリカ合衆国イリノイ州エバンストン市にあるノースウェスタン大学(Northwestern University) 機械工学科Wing Kam Liu教授の研究室に滞在しました。この研究室は、金属材料、ナノ材料、バイオ材料、土木材料などに適用される固体力学分野での、原子スケールから構造物スケールまでをコンピュータを用いて解析するという、マルチスケールの計算固体力学と呼ぶべき研究分野で世界的な業績をあげているところです。本報告では滞在した大学や研究室の雑感、また、1年間で見聞した現地の情報と恥かしながら著者の暮らしぶりを気の向くままにまとめております。

 

2.ノースウェスタン大学とシカゴ都市圏について

ノースウェスタン大学 アメリカでは中西部のハーバードと呼ばれることからもわかるように、ノースウェスタン大学は1851年に開学した総合私立大学です。アメリカでも五大湖地区および中西部の中心的な大都市であるシカゴのダウンタウンから、地下鉄+高架鉄道(通称、エル)で30分くらいのエバンストンという町にあります。医学関係学部とその病院はシカゴの中心地(ダウンタウン)にもあり、摩天楼発祥のシカゴらしく超高層ビルの大学キャンパスがあります。私の滞在したSchool of Engineering and Applied Scienceは、サポートする企業名からMcCormick Schoolとも呼ばれ、日本でも有名な経営大学院Kellogg schoolとともにノースウェスタンの中核をなす学部です。内容的には理工学部です。

この滞在中に、スタンフォード、UCバークレー、ブラウン、MIT、ハーバード、ケンブリッヂ、ロンドンなどの他大学を幾つか訪れましたが、それらと比較してもエバンストン市とそこに鎮座するノースウェスタン大学はよくまとまった印象です。ダウンタウンには小奇麗なショップが立ち並び、キャンパス横にあるミシガン湖の風景も格別で、個人的にはとても愛着のある素晴らしいキャンパスと街です。

ノースウェスタン大学と人に言うと、ノースウェスト航空とかぶる人が多く、アメリカでもシアトルとかの北西部にあるのでは?と間違われることもあります。後述します通り、北なのは確かですが、地理的にはアメリカ本土の真ん中よりも東側です。

 


   

写真1. WKLiu研究室のあるノースウェスタン大学のTechnology Institute(通称Tech)。緑が茂る正面入り口(左)と筆者のオフィス(右):Techは単一の大学ビルディングとしては超巨大である。


 


シカゴ都市圏とそこでの楽しみ 大学のあるエバンストン市はシカゴ市に隣接しており、その他の近隣都市と併せてシカゴ都市圏(Chicago land)と呼ばれています。シカゴ市は人口では、ニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐアメリカ第3の都市であり、ちょうど日本では大阪のような位置づけです。つまり、ロサンゼルスに抜かれるまでは、第2の都市ということで「セカンドシティ」と呼ばれていたのだそうです。そんなわけで、大阪市とシカゴ市は姉妹都市で、大阪市に住んでいる私はとても愛着がわきました。

シカゴから西海岸へは4時間、東海岸へは2.5時間程度で行くことができ、アメリカ各地から来訪しやすいということで、商業的な見本市や会議などが毎年多く開かれています。もちろん、全米でも人気のある観光地のひとつです。現在ではシカゴにあるオヘア空港が「世界で一番忙しい空港」ということで、アメリカ各地への中継地点として世界各国から訪れる人も多いのではないでしょうか。地形的にはアメリカ最大の湖であるミシガン湖の南西端に面し、緯度的には東のニューヨークなどと余り変わりません。しかし、五大湖の北部には北極からの寒気をさえぎる大きな山脈も温かい外洋もないため、冬場になるとシカゴの周辺は冷たい風に吹きさらされます。天気予報でアメリカ本土の温度分布図を見ると良くわかるのですが、低温の境界線がちょうどシカゴ付近に垂れ下がってきており、「こりゃ、とても寒いのも納得」です。寒さの詳細については後ほどまた述べます。

シカゴ圏に暮らすと、様々な楽しみがあります。なるほど、様々なプロスポーツが揃っています。ベースボールのCubs(今年、日本からは福留の移籍があり、ホットです)とWhite Sox(ちょっと前まで井口や高津がいました)。アメリカンフットボールのBears、バスケットボールのBulls(前はマイケルジョーダン)も有名です。あと、サッカーやアイスホッケーもあり、年中飽きません。残念ながら大学スポーツではノースウェスタンはどれも弱かったです。

写真2.シカゴカブスの本拠地、リグリーフィールド:MLBの球場では、ボストンに次いで古い。カブスは「小熊たち」の意味であり、そのためアメフットチームのほうはBears(大熊たち)となったそう。

 

個人的にはシカゴの建築物は必見に思います。摩天楼という言葉をご存知かと思いますが、香港やニューヨークも有名なのですが、発祥であるシカゴのビル群はとにかくかっこいいです。400メートル、100階を超えるシアーズタワーとジョンハンコックセンター(ビッグジョン)の二つはかなり遠くからでもそれらの黒い巨体を見ることができ、シカゴのランドマークになっています。また、シカゴ川あたりからの様々な高層ビルとそのスカイラインは芸術といって良いくらい美しいです。夏にはシカゴ川をクルーズしながら船で建築物を回るツアーがあるので来訪予定の方には特にお勧めします。

また、シカゴは大阪と同じく、「食い倒れ」の街です。以前から国内貿易の要衝でしたので、食肉をはじめとする農産物が集まってきたそうです。ディープデッシュといわれるシカゴピザ、スペアリブやビーフステーキが有名で、美味です。筆者も友人と堪能しました。また、毎年7月にはTaste of Chicagoという屋台村の祭りが中心部のグランパークで開かれます。食だけではなく、ブルースやオペラなどの音楽、シカゴ美術館をはじめとする各種美術館や博物館も盛況で、筆者はとくにシカゴ美術館とシカゴ大学の近くにある産業科学博物館が好きでした。



 

写真3.シカゴの摩天楼の双璧を成す二つのビル、シアーズタワー(左)とビッグジョン(右):シアーズタワーの最上階は400メートルを超えていて、東京タワーの天辺よりもはるかに高い。ビッグジョンは横から見ると台形をしているので安心感がある。

 


 

 

写真4.「くいだおれ」の街、シカゴ。写真上から右に向かって、ディープデッシュピザ、スペアリブ(エプロンは□□)、シカゴホットドック、Taste of Chicagoの風景。:ピザは25センチ径でも2人で満腹。シカゴアンホットドックではケチャップは邪道だそうです。


ノースウェスタン大学のあるエバンストンも含めて、シカゴ都市圏は電車やバスが整備されています。CTAという組織(シカゴ市交通局とでもいうのでしょうか)が地下鉄とバスを走らせており、さらにMetraという近郊電車で少しはなれたところまでも行くことができます。車がなくても基本的に生活可能だと思います。シカゴ−エバンストン間のインターキャンパスのバスや、エバンストンの大学エリア内でもシャトルバスのサービスがあり、大学側では学生や職員には寮や大学に自動車を持ってこないことを推奨していました。

治安ですが、シカゴのダウンタウンのうちループ地区と呼ばれる中心地とノースウェスタン大学がある北部方面は安全に思いました。南部や西部は治安が悪く依然として凶悪事件も多いと良く聞きましたので、筆者は余り訪れませんでした。皆さんもご存知の通り、滞在中にアメリカの別の大学内で大きな射殺事件があり、アメリカの銃器問題に心が痛むとともに、生活での安全は自分で守る意識が大事だと痛感しました。

 

 

写真5.シカゴの交通機関である、CTAの電車。地下鉄もあるが、高架鉄道が主なのでL(エル)と呼ばれる。バスはとても充実。

 


以下省略、絵のみ抜粋(関西大学工学会の定期刊行物をご覧ください)

Copy-right(2008) K.Saitoh&Kansai University(Kougakukai)

無断転載はご遠慮ください

2008.9.20 K.S.

 

写真7.大学の前で見つけたR2D2のおもしろ郵便ポスト。帰国前には元の青色に戻ってしまいました。

 

 

写真8.クリスマス頃の街の様子。左がエバンストンに出現したツリー、右がシカゴダウンタウン(ループ地区)での買い物客。寒いとクリスマスが一層楽しみになります。

 



 

写真8.夏のエバンストン(左):ノースウェスタンにはプライベートビーチやヨットハーバーがあります。ヨットの向こうに見えるのはシカゴの摩天楼で、この時期には絶景です。

冬のシカゴリバー(右):川が凍っています。同じく日本から来ていた□□科の□□□さんと眺めました。この頃には寒いのにもある程度慣れました。


ご参考

ノースウェスタン大学HP:

http://www.northwestern.edu

ノースウェスタンMcCormick School HP:

http://www.mccormick.northwestern.edu/

著者HP:

http://www2.memm.mec.kansai-u.ac.jp/saitoh/nano

9(おまけ).1年の研究で脱皮した(はず)の著者:この写真を撮ったフィールド博物館もおもしろかったです。